ICTが進んでいく中で、情報セキュリティをいかに守っていくかということは常に問題となってきます。これらの問題に立ち向かっていくには、地域の教育委員会が主導的な立場となりICT改革に臨むとともに、確固としたセキュリティポリシーを打ち立ててシステムを導入していかなければなりません。
橋本市教育委員会では、セキュリティレベルに応じたデータ管理を行い、情報を一元化してIT教育に役立つシステムを構築するために、SASTIK Vを利用。高いセキュリティの下で情報を管理するだけでなく、将来的な活用も広げようと考えています。
和歌山県北東部にある橋本市は、もともとICTの取り組みに積極的なエリアです。文部科学省が技術・家庭におけるLL教室を推進していた時代から、2名に1台のPC環境を実現していました。
2000年にはe-Japan構想に先立って教室でのPC活用を開始。しかし、先進的であったがゆえに光通信のLAN環境にPCのスペックが追いつかないというジレンマに陥ってしまいました。
こうした経緯から、2007年度にはICTインフラの入れ替えおよび整備を行うことになったと、教育長の森本國昭氏は話します。
「ITを活用していかなければならない時代の中で、本格的に実践で使える体制を整えようと考えたのですが、これまで導入していたパソコンでは起動するのにも時間がかかるという状態でした」
同様に、「パソコンの動作速度が遅く、"調べ学習"などに有効に活用できないという課題がありました」と話す学校教育課・指導主事の岡本孝範氏は、「光ファイバー網も整備されていたのですが、パソコンのスペックの問題で光通信の速度を十分に利用し切れていないという問題もありました」と当時の悩みを明かしてくれました。そのような中で、端末であるパソコンを入れ替えるだけでなく、LANとシステムに関しても新たなものを導入することを橋本市教育委員会は決定します。
「校内にあるパソコンが古かったため、教職員が持ち込んだ個人のパソコンや寄付されたパソコン、学校独自で購入したパソコンなどを利用している状態では、セキュリティ面で大きな問題があります。また、外につながるインターネット回線と校内LANを切り離すことも必要だと考えていました」(岡本氏)
新たなICTインフラとシステムを導入するにあたって、橋本市教育委員会はRFI(request for information)で意見を募り、2006年の政府のIT新改革戦略に基づいて要求仕様書を作成。その中には、情報管理の一元化とセキュリティ対策という命題も含まれ、そのためのシステムとして採用されたのが、「SASTIK V」でした。
2008年1月からSASTIKを含む新たなシステムを稼動させている橋本市教育委員会の岡本氏は今回のシステムを高く評価しています。
「教育委員会、校長、教頭、成績関係の教職員、一般の教職員の各レベルに応じたセキュリティを確保するということがわれわれの要求でした。今回のシステムは、予想していた機能を十分に使えるという点で満足しています。重要なデータをわれわれの考えるセキュリティレベルで管理できますし、データにアクセスしたログを残すことができるのは大きなメリットです」
SASTIKは、USB型認証キーを挿入した上で、パスワードを入力する二因子認証ですので、なりすましが回避できるほか、SASTIKを介した動きはすべてログとして残り、情報の一元化とセキュリティの強化に直結します。もちろん紛失や盗難の際にはそのUSB型認証キーからの接続が遮断できるため、情報漏えいのリスクなど、教育機関が一番懸念する課題に関しても、明快に回答できるシステムなのです。
また、「導入コスト面でも満足しています」という岡本氏の言葉通り、SASTIKはコストメリットの面からも評価されています。
2006年3月に町村合併をし、小学校14校、中学校7校、合計21校の初等中等教育機関を束ねる橋本市教育委員会。
SASTIKの導入により、セキュリティを守るだけでなく、情報の一元管理による校務の効率化についても岡本氏は期待しています。
「現場の教職員は、当初は戸惑うかもしれません。しかし、情報を一元管理できるので、毎年行われる教職員の異動や転出などの際にはスムーズな引継ぎを行うことができます。また、これまでは、文書や電子データなどバラバラな媒体に保存されていたため、情報共有が難しいなどの現状がありましたが、SASTIKによるデータ活用を基本にすれば、校務の効率化には大きく貢献できると思います」
教職員に対しては、導入前からPCやSASTIKの使い方の講習会などを行っており、今後も教育委員会としてこれらの活動を行っていく予定であると話す岡本氏。
「SASTIKによって校務が効率化でき、セキュリティも守られるので、使い勝手については各教職員の慣れの問題だと思います。使い勝手の向上やセキュリティ意識の向上のためには、講習会なども開いていますし、各校の代表者の研修なども行っています」
「セキュリティを高めて使い勝手をよくすることは重要」と話す岡本氏ですが、Active DirectoryとSASTIK Vを連携させている中で「将来的にパソコンもSASTIKも増やしていき、1人に1つのSASTIKをそろえ、Active Directoryを活用してパソコンのログイン用のパスワードとSASTIKのパスワードを共通化したいと考えています」と将来的な活用も考えています。
「今回のSASTIKを含めたシステムによって、教育委員会に権限を一元化でき、各学校の端末の動きを把握することができるようになりました。メール添付などのセキュリティの低い方法を使わなくても、SASTIKで教育委員会のサーバにアクセスすれば、高いセキュリティでデータのやり取りが行えます。今後は、教育委員会のサーバが教職員の交流の場になり、必要なあらゆる情報がデータベース化されているような環境を目指していきたいと思います」(岡本氏)
教育に関する重要なデータを保管する責任と、先生方に有効にシステムを活用していただき、効率的な校務環境を提供する責任。橋本市教育委員会の新たなチャレンジは、
SASTIKと二人三脚で一層の進化を遂げそうです。
※ タイトルや文中に記載の所属・役職等は、取材当時のものです。
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